- 健康コラム
- Vol.1 肌トラブルは腸を疑え
「高価な化粧水を使っているのに乾燥肌が治らない」、「便秘気味で肌荒れになり、シミも増えた」といった経験を持たれる方は多いと思われます。逆に、お腹の調子が良くなったら、肌トラブルが改善したという方も珍しくありません。腸内環境の乱れはお肌にとって大敵です。
■腸内環境の乱れは栄養成分の消化吸収に影響します
最近、女性誌やテレビなどで「内外美容」とか「インナービューティー」といった言葉をよく目にするようになりました。内外美容とはその言葉のとおり、「内からも外からもトータルでケアして、美しくなろう」という意味です。同じ化粧品を使ってお肌のお手入れをしても、お腹の腸内細菌の状態によって、お肌に差が生じることをご存じでしょうか。その謎は、腸が日頃からお肌の健康にとってどんな役割を果たしているかを理解していけば解けてきます。
腸の重要な役割として、栄養成分を消化吸収したり、食物繊維などの栄養素を発酵させ、ウンチを作って排せつする働きがあります。せっかく健康やお肌に良いとされる栄養成分をとっても、効率よく消化吸収されなければ意味がありません。
お腹の調子が悪いと、お肌の健康には欠かせない亜鉛や鉄、ビタミンC、A、B群、D、Eなどが十分吸収されず、不足気味となります。これらの栄養素の吸収を助ける酵素は腸内細菌が作り出しています。亜鉛は皮膚や粘膜の健康を助けるミネラルです。鉄が不足すると、肌のくすみやシミの原因につながります。
また便秘になると、ウンチにたまっている有害物質やガスが腸壁から吸収され、血中に流れ出し、ニキビや肌荒れ、顔のむくみなどが生じやすくなり、腸粘膜のバリア機能が失われることで、不要な毒素などが血中に流れ込むリーキーガット症候群(腸もれ)も肌トラブルを引き起こす原因となります。皮膚は汗や皮脂などの老廃物や有害物質、余分な水分を排せつする重要な器官です。いつもよりも有害物質などを排せつする作業が増えてしまうと、お肌の新陳代謝が追い付かなくなり、肌トラブルを引き起こしやすくなってしまうのです。
■お腹の調子が悪くなるとホルモンバランスも乱れてきます
腸の重要な働きとして見逃すことができないのは、ホルモンバランスと自律神経の調整を担っている点です。
女性ホルモンの合成を助けるビタミン類や、腸の働きを良くするホルモンであるセロトニンは腸内細菌が作り出しています。このためお腹の調子が悪くなると、ホルモンバランスも乱れてきます。女性ホルモンの中でもエストロゲンはお肌のハリやツヤを保つために不可欠なホルモンです。またセロトニンがきちんと分泌されないと、ターンオーバーのサイクルが乱れ、お肌にも悪影響を及ぼします。
■皮膚バリア機能の低下は皮膚疾患と関係しています
体の表面を覆っている皮膚には、お肌の水分を保持したり、外部からの細菌やダニ、埃などの異物や紫外線の侵入と攻撃を防ぐ役目があります。これを「皮膚のバリア機能」と呼びます。
加齢などによってお肌の中の表皮の最も表面にある角質層の水分量が減少すると、お肌の乾燥や敏感肌を引き起こし、バリア機能も低下します。バリア機能が低下すると、外界から細菌やウイルス、ダニや埃などのアレルゲン物質が侵入しやすくなり、湿疹やかゆみなどにより、生活の質は著しく低下します。お肌が乾燥すると、粉ふきや皮むけ、赤み、痒みが出て、化粧をしてもパサパサとした、いわゆる化粧ノリの悪い状態となります。お肌の健康を守ることは外見上の美しさだけではなく、バリア機能を高める観点からも重要なのです。
腸内環境を改善すれば、腸内細菌が健康なお肌を保つために必要なビタミン類を合成する機能が維持されるだけではなく、食べ物からとった栄養成分もきちんと消化吸収でき、栄養不足に陥ることなく、お肌のトラブル防止にもつながってきます。
そのためにも、日頃から“腸活”に取り組み、“素肌美人”を目指してみてはいかがでしょうか。
「健康の輪」No.34より一部抜粋